東京大学 大学院薬学系研究科 薬品作用学教室

Laboratory of Chemical Pharmacology,Graduate School of Pharmaceutical Sciences,The University of Tokyo

2019年のニュース

忘れた記憶を回復させる薬を発見(2019.1.8)

北海道大学大学院薬学研究院の野村洋講師が当研究室の助教であった当時、京都大学大学院医学研究科の高橋英彦准教授との共同研究で、脳内のヒスタミン神経を活性化する薬が記憶に与える影響を調べました。その結果、記憶テスト前にヒスタミン神経を活性化すると、忘れてしまった記憶でも思い出せるようになることを見出しました。 マウスにおもちゃを見せて、おもちゃの形を学習させました。通常のマウスは1週間経過するとおもちゃを思い出せませんが、ヒスタミン神経系を賦活化する薬を与えると、おもちゃの記憶を思い出すことができました。この薬の働きには、嗅周皮質と呼ばれる脳領域の活動上昇が関わっていました。このデータをもとに、同種の薬物が、ヒトでも記憶成績を向上させる効果があるかを38名の参加者を対象として調べました。あらかじめ参加者にはたくさんの写真を見せ、記憶テストでは再びたくさんの写真を見せて、写真を覚えているか質問しました。その結果、同薬によって正解率が上昇しました。もともと記憶成績が悪い参加者ほど薬の効果が大きいことがわかりました。 本研究成果は、脳内ヒスタミンの働きやヒスタミン活性化薬の新しい作用だけでなく、柔軟に働く記憶のメカニズムの解明に貢献します。本研究成果は、2019年1月8日のBiological Psychiatry誌(オンライン版)に掲載され、テレビ朝日、フジテレビ、毎日新聞、日本経済新聞、産経新聞など多くのメディアで紹介されました。

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